水の中でいちばん先に効いてくるのは、顔に合ったマスク1枚だと思うんです。合っていないと、潜っている間ずっと水が目に入り続けて、深さも景色もそれどころではありません。合っていれば、マスクのことを忘れて下を見ていられます。5,000円くらいのものです。
なので、最初に買うのはマスクとスノーケルの2つだけで足ります。合計で1万円ほどです。器材の記事はたいてい「おすすめ10選」で、並んでいるものがどれも必要そうに見えます。どれが要るのか分からないまま止まっている方は、多いと思います。言われたとおり最初に全部揃えると20万円を超えて、そのうち半分は、技術が固まる前に買ったせいで使わなくなるものです。
買わないものを先に決めたほうが、たぶん早いです。
- 最初に買うのはマスクとスノーケルだけ。 フィンとウェットスーツはレンタルで凌げます
- マスクは店頭で顔に当て、鼻から吸って落ちないかを確かめてから買ってください。 隙間があれば、何をしても水が入り続けます
- 伊豆で潜るなら、スーツは6〜11月が3mm、12〜5月が5mm。 迷ったら、通う季節のほうから決めます
最初に買うのは2つだけです
| 順番 | 品目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | マスク | 5,000〜6,000円 | 顔に合わないと練習が成立しない |
| 2 | スノーケル | 4,000円前後 | 安く、口に触れるものなので自前が衛生的 |
| 3 | ウエイトベルト | 2,500〜3,000円 | 安い。ただしスクールが貸すことが多い |
| 4 | ウェットスーツ | 1〜5万円 | 体型依存。頻度が固まってから |
| 5 | ロングフィン | 1.8〜10万円 | 技術が固まるまで買わない |
| — | ダイコン・モノフィン(両足を1枚のブレードに入れるフィン) | 4〜25万円 | 目的が決まってから |
具体的な製品名と実売価格は費用ガイドに、買う場面の話は持ち物と買い物の記事にあります。この記事は選び方を書きます。
マスクの基準は「内容積」ひとつです
潜降すると水圧でマスクの中が陰圧になり、顔に貼りついてきます。解消するには鼻から息を送り込むしかなく、その空気は肺から出ていきます。マスクの内容積が大きいほど、圧を合わせるために酸素を捨てています。 スキューバはタンクがあるので問題になりませんが、フリーダイビングでは潜れる時間に直接効きます。フリーダイビング用マスクが小さく、視界も狭いのは、この一点のためです。
顔に合うかを確かめる
店頭で、ストラップを使わずにマスクを顔に当て、鼻から軽く吸います。手を離しても落ちなければ密着しています。隙間があるマスクは、何をしても水が入り続けます。「安いから」「評判がいいから」で選んではいけない唯一の器材です。視力が必要なら、レンズ交換に対応したモデルを最初から選んでください。
スノーケルに高いものを買う理由はありません
フリーダイビングでは、蛇腹も排水弁もない直管型が好まれます。潜降中はスノーケルを口から外すので機能はいらず、部品が少ないほど軽く抵抗も少ないからです。4,000円前後で十分です。
フィンは素材で3〜6倍違います
Cressi Japanの公式価格で比べると、プラスチック(ポリプロピレン)のGARA TURBO FLEXが18,480円、カーボンのGARA TURBO CARBONが103,950円です。同じメーカー・同じシリーズで5倍以上です。
最初にカーボンを買ってはいけない理由
カーボンは推進効率に優れます。ただし割れます。プールの壁を蹴る、岩に当てる、車のドアで挟む、といった場面です。技術と扱いが固まっていない時期に10万円のブレードを持ち込むのは、確率の悪い賭けです。さらに、キック動作が固まる前に硬さを選ぶと、それに合わせて変な癖がつきます。最初はプラスチックの18,000円台で足ります。 硬さの選び方はロングフィンの記事に書きました。ロングフィンはフルフットで、ネオプレンソックス(3mm前後)を履いた状態でフィットするサイズを選びます。
ウェットスーツの厚さは水温が決めます
PADIの一般的な目安は、3mmが水温26〜21℃、5mmが21〜15℃、7mmが15〜10℃です。問題は「伊豆は何月に何℃なのか」がどこにも書いていないことです。気象庁の日別海面水温から、駿河湾(伊豆西)と相模湾(伊豆東)の月平均を直近10年で出しました。
| 月 | 駿河湾 | 相模湾 | 目安の厚さ |
|---|---|---|---|
| 1〜5月 | 17.0→19.9℃ | 16.8→19.4℃ | 5mm(2月が最も冷えて16.1℃) |
| 6〜11月 | 22.7→22.0℃ | 22.1→21.4℃ | 3mm(8月が最も暖かく28.0℃) |
| 12月 | 18.9℃ | 18.6℃ | 5mm |
伊豆は6〜11月が3mm、12〜5月が5mmです。 多くのスクールが海洋実習を6〜11月に設定しているのは、この表と一致します。「シーズン」とは、3mmで潜れる期間のことです。月ごとの数字はデータページにあります。
ただし、これは海面の水温です。夏場は水温躍層ができるため、水深20〜30mでは海面より大幅に低いことがあります。深度を狙う潜水では厚めを見てください。
オープンセルは、最初の1着ではありません
フリーダイビング用スーツの主流は、内側に裏地を貼らずネオプレンの気泡を切った面を肌に当てるオープンセルです。肌に吸い付いて水の出入りが減るため、同じ厚さなら明確に暖かいです。代わりに、石けん水などの潤滑なしでは着られず、爪で簡単に破れます。最初の1着は汎用の既製品(1〜2万円台)で十分で、専用のオープンセル(5万円台)は海に通う頻度が固まってからで間に合います。
ウエイトはラバーベルト一択です
潜降すると水圧で胸郭が縮みます。ナイロンベルトだと、そのぶん緩んでずれます。ラバー製は縮んだぶんを追従するので位置が動きません。2,500〜3,000円です。ウエイト量は必ずインストラクターに見てもらって決めてください。 重すぎるウエイトは、疲れたときに浮上できないという最悪の事態に直結します。

ブイ・フロート、ランヤード(体とロープをつなぐ命綱)、ダイブコンピュータ、モノフィン(両足を1枚のブレードに入れるフィン)は、いずれも深度ラインを使う練習が始まってからで遅くありません。
この記事で確認できなかったこと
- グラスファイバーのフィンの価格帯・仕様(一次ソースで確認できず、表から外しました)
- 水深別の水温(気象庁の公開データは海面水温のみ)
- マスクの内容積の実数値(各メーカーの製品ページに数値の公開を確認できず)
次の一歩
買う順番が決まれば、あとは上から順に潰すだけです。
- まずマスクを、店頭で顔に当てて選んでください。 ストラップを使わずに当てて鼻から軽く吸い、手を離しても落ちなければ密着しています
- スノーケルは直管型を4,000円前後で買ってください。 ここに予算を足しても、潜れる時間は変わりません
- フィンとウェットスーツは、どこで潜るかが決まってから買ってください。 通う季節が決まれば、厚さは上の表のとおりに決まります
買い揃える前に、一度レンタルで海に入ってみてください。行き先は47都道府県の海のデータから探せます。海で守ることはこの3つだけで、器材はその3つを守りやすくするための道具です。
価格はすべて2026年8月時点の公開情報です。ウエイト量の決定と器材の適合は、必ず有資格のインストラクターの確認を受けてください。
