AIDA・SSI・PADI・Molchanovs・RAID。日本語で調べると団体名がバラバラに出てきて、どれがどう違うのか分からなくなります。

規格書と公式コースページを全部並べてみたんですが、最初の1枚の段階では団体の差はほとんど効きませんでした。効くのは、家から通える範囲でいつ開催しているかのほうでした。なので最初の1枚は、通える場所でやっている団体から選んでいいと思います。あとからクロスオーバー(他団体への乗り換え)で移れるので、ここで進路が決まるわけではないです。

ひとつだけ、比較表を見るときに気をつけてほしいところがあります。同じ表に並んでいる数字でも、意味が違うんです。AIDAの2分は越えないと不合格で、PADIの90秒は到達目標です。

  1. 最初の1枚は、通える場所で開催している団体から。 あとから移れます
  2. 表の数字は「要件」か「目標」かを先に確かめてください。 AIDAの2分は越えないと不合格、PADIの90秒は到達目標です
  3. 冬に思い立ったなら、プール完結のコースから入ってください。 海洋実習を含むコースは、おおむね6〜11月に縛られます

団体ごとの向き不向き

迷っているならPADIかSSIです。日本国内で開催しているショップの数が圧倒的に多く、スケジュールが合います。数字で自分を測りたいならAIDAです。競技記録を公認している団体そのものです。合格ラインが規格書で公開されているので、受ける前に自分の現在地が測れます。トレーニングを長く続けたいならMolchanovsで、認定要件が5種目に細かく分かれています。RAIDは国内開催が少なめです。

そして、後から移れます。どの団体の資格でも、他団体へはクロスオーバー評価で移れます。AIDAは、他団体の中級・上級認定者がAIDA3クロスオーバー評価を経てAIDA4に入れると明記しています。PADIも上位コースの前提を「PADI Freediverまたは他団体の同等資格」と書いています。ただし、団体間の対応関係を一覧化した公式マトリクスは、どの団体も公開していません。移籍を前提にするなら、移る先のショップに先に確認してください。

そもそも、なぜ資格が要るのか

器材が少ないので、物理的には潜れてしまいます。それでも実質的に必要になる理由は3つです。1つ目は、ひとりでは練習できないことです。講習は、安全確保の手順を身につけたバディ(一緒に潜って水面で見張り合う相手)を得る場でもあります。2つ目は、深いプールに入れないことです。首都圏の水深5m級プールは、団体登録に有資格者の常駐を課しています。3つ目は、保険と現地サービスの前提になることです。資格は「腕前の証明」というより、練習環境へのアクセス権に近いです。

最初の1枚:5団体の数字

表の種目名は、AIDAの競技規則と同じ言葉です。STA(息を止める時間)、DYN(フィンで水中を水平に泳ぐ距離。ダイナミックとも呼びます)、CWT(自力で潜って戻る深さ)です。

AIDA 2 PADI Freediver SSI Freediver Molchanovs Wave 1 RAID OW Freediver
静的無呼吸 STA 2分00秒以上 90秒(目標) 最低要件なし 未公開 記載なし
ダイナミック DYN 40m以上 25m(目標) 100ft(約30m) 未公開 15m
深度 CWT 12m以上/上限20m 10m(目標) 約9m/上限約18m 未公開 上限20m
年齢 18歳以上 12歳以上 12歳以上 — —

※AIDA2は水温12℃未満なら深度10m、16歳は保護者署名で受講可。SSIの数値は2018年版規格書のLevel 1です。現行サイトはFreediver/Advanced/Performanceという名称に改称され、秒数・距離の記載が無くなっています。

最大の落とし穴:その数字は「要件」か「目標」か

団体別・ランク別の到達深度の比較グラフ。入門ランクはAIDA 12m、PADI 10m、SSI 9m、Molchanovsは未公開。中級はAIDA 24m、PADI 20m、SSI 18m、Molchanovs 24m。上級はPADI 32m、SSI 30m、Molchanovs 34m、AIDAは未確認。PADIの棒は淡く塗られ、要件ではなく目標であることを示している。
図: 各団体の公式教材・規格書から BLUE BREATH が作成。淡い塗り(PADI)は合格要件ではなく Goal=到達目標。同じ「m」でも意味の階層が違う。

AIDAは「at least 2 minutes」と書きます。要件です。PADIは「Goal - static apnea of 2 minutes, 30 seconds」と書きます。目標です。

Goal - static apnea of 2 minutes, 30 seconds — PADI Advanced Freediver コースページ

つまり90秒に届かなければ不合格、とは書いていません。 「PADI Advanced(2分30秒)とAIDA3(2分45秒)は15秒差」という比較は、表面的には正しいです。ただし実務的には誤解を招きます。AIDA3の2分45秒は越えないと認定されない線、PADIの2分30秒は指導の到達目標です。自分に必要なのがどちらの厳しさかで、選ぶ団体は変わります。SSIは静的無呼吸に最低秒数を課さず、息を止められる長さより、水中で落ち着いていられるかを見る設計です。

中級・上級:ここから団体差が開きます

AIDA 3 PADI Advanced SSI Level 2相当 Molchanovs Wave 2
STA 2分45秒以上 2分30秒(目標) 2分30秒以上 2分30秒
DYN 55m以上 50m(目標) 約50m以上 50m
深度 24m以上/上限30m 20m(目標) 約18m以上/上限約30m 24〜30m
前提 AIDA2修了 Freediver ログ6回 Wave 1修了

その上のレンジ(AIDA4・PADI Master・SSI Level 3・Molchanovs Wave 3)は、STA 3分30秒・DYN 70〜75m・深度30〜40mが目安で、どの団体もCPRを含む応急手当の有効な資格を要求してきます。中級以降の要件は「自分が深く潜れること」から「相手を助けられること」に移ります。 AIDA4の数値は、公式マニュアル本文中に要件表を確認できなかったので未確認としています。

日本で取りやすいのはどれか

PADI・SSIは国内の開催店舗数が最も多いです。首都圏・関西・沖縄のいずれでも定期開催していて、日程が合わせやすいです。AIDAは日本支部が窓口として機能し、競技志向のコミュニティにアクセスしやすいです。Molchanovsは国内提携校が増えていますが選択肢は限られ、RAIDはさらに少ないです。

実務上の分岐点は海洋実習が必須かどうかです。海での潜降を要件に含むコースは、伊豆などの海洋シーズン(おおむね6〜11月)に縛られます。冬なら、まずプール完結型から入り、春以降に海洋を足します。

目的別

  • まず体験してみたい → PADI Basic Freediver、または各団体のプール完結コース
  • 一枚取って、海で潜れるようになりたい → PADI FreediverかSSI Freediver。開催数が多く日程が組みやすい
  • 自分の数字を知りたい。競技も少し気になる → AIDA 2。合格要件が公開されているので目標が明確
  • トレーニングを長く続けたい → Molchanovs Wave 1〜2
  • 将来インストラクターまで → 上位まで同一団体で通すほうが、前提条件の読み替えが起きず速い

この記事で確認できなかったこと

  • AIDA4固有の合格数値(公式マニュアル内に要件表を確認できず)
  • SSIの現行(2018年版以降)のSTA・DYN数値(現行コースページに記載なし)
  • 各団体の日本国内トレーニングセンター数の実数

次の一歩

どの団体にするかで止まっている人ほど、次の順番で進めてください。

  1. 団体名ではなく日程で探してください。 通える範囲で開催しているコースが、そのまま最初の1枚になります。全国の練習拠点一覧から始めてください
  2. 申し込む前に「合格ラインはありますか」と一言だけ聞いてください。 要件なのか目標なのかが、その一言で分かります
  3. 冬なら、プール完結のコースから始めてください。 海洋は春以降に足せます

資格は腕前の証明というより、練習環境への入場券です。あとは守るもの3つを持っていけば、海は十分に楽しい場所です。

本記事は各団体の公開資料(取得日2026年8月20日)に基づく情報提供であり、特定の団体・スクールとの提携関係はありません。実際の受講条件・料金は開催ショップにより異なります。安全に関わる判断は必ず有資格のインストラクターに従ってください。